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「VR×日常」の可能性を追求するアルファコードの挑戦

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155日前

『Oculus Rift』『HTC Vive』『PlayStation VR』の相次ぐ発売により「VR元年」と呼ばれた2016年。2017年に入ると、多様なVRコンテンツが続々とリリースされる中、異業種とのコラボレーションによって、VRの新たな可能性を切り拓こうとしている企業がある。

アルファコードだ。昨年夏の取材に続いて、同代表の水野拓宏氏と企画部門の責任者を務める佐々木拓氏のふたりに、VR活用の拡がりと今後の見通しについて聞いた。

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ジャンルを問わないVR活動


代表取締役社長 CEO兼CTO 水野拓宏氏
 

VR・MR・AR技術を活用したソリューションビジネスとスマートフォン向けサービスの開発などを手掛けるアルファコードは、これまで高知県の観光案内参加型カラオケVRシステムなど、数々の実写VRコンテンツの制作を手掛けてきた。ジャンルを問わない活動を繰り広げている理由を、同社の代表を務める水野拓宏氏は次のように説明する。

「かつてコンピュータがそうであったように、現在のVRも、一般には手が届かないプロフェッショナル領域と、生活に密着したゲーム領域に二分されているのが現状です。しかしわれわれは、その両極の間にある日常生活に近いところにもVRの可能性があると考えています」

そのため、一見VRと結びつきそうにないような分野であっても、VRに興味を持ってくれる企業や団体があれば、積極的に関わりを持つようにしていると水野氏はいう。しかしその実現には、多くの障害を乗り越えなければならないという現実もある。外部からもたらされるVR案件を受け、制作チームに対してディレクションする立場である佐々木拓氏はこう話す。

「昨年、『VR元年』という言葉が広がったおかげで、一般にもVRという言葉が降りてきた印象があります。しかし販売促進や店舗誘導など、比較的小規模なビジネスの現場でVRを活用しようという動きはまだこれから。実績や費用対効果の面で、経営陣を納得させるだけの材料が乏しいというのが現実です」


VE部 部長 佐々木拓氏
 

VRが話題にのぼる機会が増えたとはいえ、VR経験者の数はまだ少ない。伝聞やイメージだけでは、自分たちのビジネスと親和性があるのか、有用な使い方がまだあるのか判断しかねるというのがごく一般的な反応だ。

そのため佐々木氏は、外部から「VR活用したいがどうすればいいか」という相談を受けた際には、具体的な企画を提示する前に「私たちと一緒にKPI(重要業績評価指標)を取りながら、可能性を探りませんか?」と伝え、不安や心理的な障害を取り除く努力をしているという。

「潤沢な予算があるところばかりではありませんし、担当者は乗り気でも経営陣からVRに対する理解が得られない場合も多い。ですから、まずはお客様自身の業務とVRをどう絡めるのがベストか、試してみることをお勧めしています」(佐々木氏)

水野氏もこうした障害があるからこそ「VR自体を売り込むより、VRを使うことで何が得られるか、どんな課題解決につながることを知ってもらうほうが大事だ」と話す。

「あるお客様のために、工場を見学するVRコンテンツをつくった時にも感じたことですが、そのコンテンツを展示会などで体験した来場者の方から『自社でもぜひやってみたい』という問い合わせが多数寄せられました。やはり体感してはじめて『こんな用途にも使えるんじゃないか?』というアイデアが湧くものなのかも知れません」

また、このような話もある。

「展示会が終わった後、ある営業マンがVRコンテンツを入れたスマートフォンと『Galaxy Gear VR』という小型のVRHMDを持参し、顧客に体験してもらったところ、現地見学と同様に設備やそのポリシーを理解できたということで、即受注につながったケースがあると聞いて驚きました。VRには営業プロセスを短縮するようなポテンシャルがあるとは思いもしなかったからです。このように、やってみなければわからない反響や事例を集めることによって、VRの普及にも活かせるのではないかと思っています」(佐々木氏)

拡がる「VR×日常」の可能性

カテゴリーをあえて限定せず「VR×日常」の可能性を追求するアルファコードにとって、最近とりわけ大きな反響を呼んだ案件といえば、2017年2月に音楽座ミュージカルとともに手掛けた『リトルプリンスVR supported by VIVE』だろう。

「なにしろ長い歴史を持つミュージカルと最新技術のVRの組み合わせですから、多くの方に驚かれました。しかし優れたミュージカルに、未知の感覚を観客にもたらしたり、感情を揺さぶったりする効果があるように、現実では不可能とされる経験や世界観をVRでは「体験」できるという特性があります。意外性があるふたつの要素を掛け合わせることによって、より新しい表現方法が生まれるのではないか。そう考え、VRに興味を持ってくださっていた音楽座ミュージカルさんと一緒に、チャレンジさせていただくことになりました」(水野氏)

VRとミュージカルという異色の組み合わせは、結果的にこれまでのVR常識を乗り越える方法の発見にもつながったという。

「一般にVRの無理のない体験時間は5分程度といわれている中、VRHMD(VRヘッドマウントディスプレイ)を装着して映像を見る時間と、実在の役者さんによる演技を見る時間を交互に組み合わせた結果、劇中トータルで15分にわたるVR体験を提供できました。これはわれわれがこのチャレンジで得た収穫のひとつです」(水野氏)

むろん、はじめての試みゆえ、すべてが思惑通りに事が運んだわけではない。

「VRHMDの重さに対して違和感を感じられた方や、目新しいVR映像に目を奪われるあまり、ストーリーの中に入り込めないと感じた方もいらっしゃいました。その反面、音楽座ミュージカルさんの世界観を壊さずにVR化されていたと評価してくださった方や、観客の好意的な反応を見て、もう少し踏み込んだ表現に取り組んでみたいと声を掛けてくださった役者さんがいたのは嬉しかったですね。克服すべき課題は少なくないものの、多くの方にVRの可能性を感じていただけたことは、大きな成果だったと思います」(水野氏)

2日間で15万人から20万人が集まる集英社主催の『ジャンプフェスタ2017』で『暗殺教室VR ジャンプフェスタの時間』の企画を担当した佐々木氏も、新たな取り組みをするたびに観客の反応を見るのが楽しみだという。

「このコンテンツは、週刊少年ジャンプの人気連載だった『暗殺教室』をテーマに、8人のプレイヤーがひとつのVR空間に入り、協調して、劇中に登場するキャラクター『殺せんせー』を「暗殺」するというゲームなのですが、原作の世界観を壊さず大勢の参加者に楽しんでいただくために、1回あたり3分間という限られた時間内で、主催者側とはどのようなオペレーションが最適か、何度も検討を重ねました。その結果、体験アンケートに応じてくださった約600名のうち、およそ580名の大半が、5段階評価で4か5を付けてくださったのは嬉しかったですね」

「当日のツイートを検索してみたら、勝った負けたではなく『殺せんせーって、実際はあんなに速かったんだ。あれじゃ殺せないわ』というようなポストをしている方を見つけました。単にゲームに参加したというより、むしろ現実に近い体験と捉えてくださった方もいたんです。こうしたVR的な反応を見ると、まだまだ可能性はあると感じましたね」(水野氏)

VRなら空間も時間も超越できる

「とくにB2B領域での活用はこれからもっと進むと思います。先ほども例に挙げた、国内にいながら海外の工場を見学するような用途や、多額の費用と人手がかかるため、頻繁に実施できない緊急訓練のようなイベントを社員や顧客に見せるような用途にも実写VRは有効です」(水野氏)

もちろんそれ以外にも活用法はある。現実であればリスクがありすぎて実現不可能な体験、たとえば、ダルビッシュ有投手が本気で球を投げるバッティングシミュレーションや、エベレストのような、高度に訓練された人物にしか到達できない危険地帯に赴く映像も、VRなら安全かつ臨場感を伴ったコンテンツとして提供できる。もちろんVRの特性を生かせば、空間だけでなく時間も超越することが可能だ。

「今度、私の後輩の結婚式をVRで撮影させてもらうのですが、近い将来、結婚式場の披露宴メニューに、従来のビデオや写真撮影に加えて、VR動画の撮影も加わることが当たり前になるでしょう。VRを使うことによって、ケガや病気で来場できない方に式の状況を楽しんでいただくことはもちろん、挙式の後に生まれたお子さんが、後にVRを通じて両親の結婚式に参加するような経験をするのも、当たり前になるかも知れません」(佐々木氏)

だが、こうした世の中が成立するためには、まだまだやるべきことが少なくないと水野氏は話す。

「いまは、われわれ自身がVRコンテンツをつくることで需要を喚起している段階ですが、普及期に入るには、安価で高性能なVRHMDの登場とともに、インターネットでいえば『ホームページビルダー』に該当するような、誰でも簡単にVRコンテンツを生み出せるツールが欠かせません。前回のインタビューでもお答えしたと思いますが、今後は私たち自身がコンテンツをつくるだけでなく、多くのみなさんにVRコンテンツを制作していただけるようなツールやユーティリティの提供通じて、VRの裾野を拡げていきたいと考えています」

VR分野で求められる人材像とは

そしてもうひとつ大事なのが優れた人材確保だ。最後にVR分野で求められる人材像を水野氏に聞いてみた。

「ここしばらく、アプリやウェブサービスのUI/UXに関する議論が盛んですが、それはあくまで、すでに定義されているモノに対してどう最適化すべきかという議論に過ぎません。VRに関しては、まだ定義すらない状況です。つまりいまVRに取り組めば、定義をつくる側に回れる可能性がある。VRには、映像やCGの専門家だけでなく、広くウェブサービスで培った経験も生かせます。これから新しい分野に挑戦してみたい人にはもってこいの分野だと思いますね」

株式会社アルファコード

代表取締役社長 CEO 兼 CTO 水野拓宏
設立:2015年10月1日
所在地:東京都文京区湯島3-1-3 MS ビル
https://www.alphacode.co.jp/

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