ネット広告代理店のオプトがエンジニア採用に成功した4つの理由とは

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ネット広告代理店のオプトが、2016年4月に新たな組織を立ち上げた。エンジニアを主体とするテクノロジー集団『Opt Technologies(オプト・テクノロジーズ)』がそれだ。組織の立ち上げからわずか3カ月。すでに60名を超える開発体制を整えたという。急速な組織作りの秘訣はどこにあるのか。同社のテクノロジー開発2部で部長を務める平岩二郎氏と、エンジニア採用を手掛ける人事戦略部の勝股修平氏にその秘密を聞いた。

テック文化なき「営業会社」にエンジニアを呼び込む秘策

「『Opt Technologies』は、社内に3部ある開発部門を統合する仮想的なエンジニア組織であり、オプトにおけるエンジニアリソースを象徴する『ブランド』です。複雑化、高度化するアドテクノロジーの進化にいち早く対応するため、約1年の準備期間を経て、今年の4月から本格的に活動を開始しました」。テクノロジー開発2部部長の平岩二郎氏は、同組織の成り立ちをそう話す。

そもそもオプトは、eマーケティングプラットフォームの『ADPLAN』など、各種広告管理ツールの開発と提供を手掛けているが、新規開発については外部の開発会社へのアウトソーシングによって、エンジニアのリソースを賄っていた。しかしスマートデバイスの普及や、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)など、アドテクノロジーを取り巻く環境の大きな変化が、開発部門を創設する後押しになったと平岩氏はいう。

「オプトは2010年以降、社内の開発案件のほぼすべてを外部に委託するようになったため、社内に先進的な取り組みを行うエンジニア部門は存在しませんでした。しかし2015年の1月頃から『アドテクの進歩に対応するには、オプト本体にも開発部門を置くべきではないか』という議論が高まり、エンジニア部門の創設が検討されるようになったんです」

そこで白羽の矢が立ったのが、オプトグループ内でプライベートDSPを開発していたDemand Side Science社だった。同社のエンジニア部門を核とし、新たなテクノロジー集団を立ち上げることになったのだ。

「競合であるサイバーエージェントやセプテーニ・ホールディングス、アイレップの社内には、すでにエンジニア組織が存在し、新規開発を積極的に行っています。先行する同業他社との競争に打ち克つためには、内製化へ向けた舵を切る必要もありました」

しかし、テック文化が存在しない「営業会社」にエンジニアを呼び込むのはそう容易なことではない。そこで彼らが取り組んだのが、2015年から定期的に開催しているテックイベント『市ヶ谷Geek★Night』や、2016年に開設したエンジニアブログ『Opt Technologies Magazine』を使ったPR活動だ。

「市ヶ谷Geek★Nightは、1~2カ月に1回の割合で旬の技術テーマを採り上げるテックイベントで、Opt Technologies Magazineは、社内のエンジニアが持ち回りで執筆しているエンジニアブログです。これらはいずれも、オプトがテクノロジーオリエンテッドな組織を新設したことをご存知ない皆さんに対し、『オプト=テックな会社』という意識付けを行うための試み。これらのチャネルから、アドテクに直接関わるテーマはもちろん、ビッグデータやクラウド、Scalaなど、エンジニアの興味を惹きそうな話題を発信しています」

エンジニアの内定受諾率が8割にのぼる理由とは?

とはいえ、開発文化がない組織に新たなエンジニア組織を作るのは、それ相応の苦労が伴うと考えるのが普通だろう。エンジニア主体の企業であっても、エンジニア採用に苦しむ企業は少なくないからだ。しかし、エンジニア採用担当の勝股修平氏は「周囲の方のおかげでそれほど大きな苦労は感じていない」と、事もなげに話す。

「採用予算と権限を委譲してもらっており、採用手法や活用法についても一任されています。また現場で働くエンジニアの皆さんも採用にコミットしてくださっている。採用環境としては非常に恵まれていると感じています」(勝股氏)

採用に際しては、求人媒体や紹介会社の活用は言うに及ばず、SNSを活用することも珍しくないのだと勝股氏はいう。

「市ヶ谷Geek★Nightや外部のカンファレンスなどで、直接声をかけたりすることもありますね。つまり会社を好きになってもらえそうな可能性が少しでもあれば、何でもやってみるというスタンスなんです」(勝股氏)

平岩氏も口を揃える。

「『エンジニア採用はエンジニアが積極的に行うべき』というのが私の持論。上層部や人事に頼りっきりにはしません。だから採用に現場エンジニアが積極的に関わるんです。一次面接から、最低2名の現場のエンジニアと人事が面接に同席し、積極的に質問に答え、情報開示を行うようにしているのはそのため。今年に入ってからこの手法で、10名強ほどのエンジニアを採用することが出来ました」(平岩氏)

「選考プロセスにおいては、前職の企業名や肩書きを判断材料にすることはありません。重点的に見るのは技術的な素養と、一緒に働くイメージが持てるかどうかのふたつだけ。多様性のある組織を作りたいと考えているので、画一的な採用基準で足を切るようなことはしたくないんです」(平岩氏)

勝股氏によれば、エンジニアの内定受諾率はそれなりの高さを誇っているのだという。

「エンジニアの内定受諾率はおよそ8割です。必要とあれば、事実情報の提供としようと面接時間中にエンジニアが参加するSlack上でのやり取りや、テクノロジースタック等のドキュメントを開示しながら仕事内容の説明をすることもあります。人事とエンジニアが率直に会話する様子も包み隠さずお見せしますから、私達を媒介にしてフラットな社風を実感していただけていることが、背景にあるのかも知れません」(勝股氏)

これまで採用したエンジニアのバックグラウンドは、SIなどで開発経験を持つエンジニアから、素養が見込まれた書籍編集者までと実にさまざまだったが、勝股氏によると共通点があるのだという。ひと言でいうと『基礎能力の高さ』だ。

「平岩が申し上げた通り、技術的な経験が多少乏しくてもエンジニアとしての素養があれば、入社後にキャッチアップしていただけると考えています。ですから人事としては基礎思考能力や自学自習の習慣などの『基礎能力』に注目して、彼らに会社を魅力的に感じてもらうためのプロセスやコミュニケーションをエンジニアと一緒に考え、サポートするようにしています」(勝股氏)

中の人が楽しくなければ、良い採用は出来ない

ほかにもまだ、採用を成功させる「秘密」がある。エンジニア部門と人事部門の「近さ」だ。

「人事とエンジニアは組織上は別部門の所属ですが、ことエンジニア採用に関しては文字通り一体です。席も隣接しているので、仕事に関わりのない趣味の話や、たわいのない雑談も含め、日頃からコミュニケーションが取りやすい環境になっています」(勝股氏)

採用に直接関係ない日常から積極的に関わりを持つことによって、肩肘を張らない人間関係を作ることが出来ると勝股氏はいう。エンジニアと人事の物理的、心理的な近さが、緊張感が漂いがちな面接の場の雰囲気を和らげ、応募者に好印象を残しているのかも知れない。

「Opt Technologiesを率いる執行役員の口癖に、『ハレーションを恐れるな』という言葉があるのですが、エンジニアと人事の関係はまさにこれ。互いに信頼しているからこそ、それぞれの思いや考え方をぶつけ合うことが出来る。ですから単に仲が良いだけではないんです。こうした関係性を保ち続けることは、多様性ある組織作りに欠かせないことだと思います」(平岩氏)

最後に、エンジニア採用に悩む企業に対して、よりよいエンジニア組織を構築するためのアドバイスをもらった。

「アドバイスといったら大変恐縮ですが、もし自分がエンジニア採用に苦心している企業の人事担当だとしたら、採用に情熱を注いでくれるような核となるエンジニアと一緒に職場の環境作りから始めると思います。楽しく効果的に働ける良質な環境が出来れば、社外のエンジニアに対するフックにもなり得るかなと。エンジニア、非エンジニアを問わず、人や環境を含めた職場の状態を良くすることは、採用力に直結すると思っています」(勝股氏)

「勝股がいうように、中の人が楽しく働いていなければ、良い採用は出来ないというのは、私も同感です。採用は組織の未来を作るもの。そういう意味では、オプトの採用方針や採用戦略は、どれひとつとして突飛なものはありません。課題を一つひとつ着実にこなしているだけといっていい。こうしたアプローチによって、テクノロジーとビジネスの両面に理解があるエンジニアを育てるのが今後の目標になるでしょう。下期にかけては、ポテンシャルを秘めた若手と並行して、プロフェッショナルなスキルを持ったエンジニアの採用にも注力し、テック文化の醸成に努めるつもりです」(平岩氏)

まとめ

オプトに学ぶエンジニア採用を成功させるヒント

(1)イベントやブログを通じて、テックイメージの浸透に努める
(2)現場エンジニアに採用にコミットしてもらう
(3)応募者に対し、包み隠さず率直な情報開示を行う
(4)エンジニアと人事の距離を縮め、良好な職場環境を作る

今期30名の新規採用を達成し、2017年までにエンジニア100名体制を目指しているというオプト。エンジニアと人事の努力により、外部エンジニアとの接触面は着実に広がっている。さらなる組織体制の充実は、テック文化がゼロだった営業会社にギークなエンジニア組織を作る上で貴重な事例となるはずだ。TechClipsも彼らの今後に注目していきたい。