受託開発歴15年のインフラエンジニアが、音楽コラボアプリ「nana」に魅せられたワケとは?

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株式会社nana musicは音楽コラボアプリ「nana」を運営する企業。2014年にnanaをリリースして以来、ユーザ数は堅調に伸び、現在はアプリダウンロード数700万を超えるに至っている。今回は、同社の開発ユニットでDevOps Specialistとして活躍する佐藤学氏に、nanaに魅せられた理由や今後の展望を聞く。

<お話を伺った方>
株式会社nana music
開発ユニット
DevOps Specialist
佐藤 学氏

nanaとは?

nana

nanaは、ユーザが投稿した伴奏に別のユーザの歌声や他の楽器の演奏を重ねてひとつの楽曲をつくり上げることができる音楽コラボアプリだ。

スマホさえあれば距離や時間、空間を超えて音楽を楽しめる手軽さが受け、女子中高生を中心にユーザが拡大。現在は累計ダウンロード数700万以上、楽曲再生数22.8億回を数える人気の音楽投稿プラットフォームとなっている。

最近では音楽に限らず、投稿された台本にそってキャラクターを演じる「声劇」がひとつのジャンルとして定着しているほか、各地で開催しているnanaユーザのための交流イベント「nanaるday」には全国から熱心な「nana民」が集う。

2012年8月のリリースからおよそ6年の時を経て、nanaは「音」を軸とした独自のコミュニティー文化を育むアプリへと進化を遂げつつある。

地方からITの中心地を目指し東京へ

インタビュー画像

2018年10月中旬、そんなnanaを運営するnana musicにひとりのエンジニアが入社した。システム開発会社やSIerなどで、医療、金融、証券向けシステムの開発やデータベース設計、インフラ構築などに携わってきた佐藤学氏だ。

「20歳から31歳まで地元のシステム開発会社でシステムエンジニアをしていました。その後上京してSIerに転職。ここで5年ほどデータベースの統合プロジェクトやDevOps推進プロジェクトを経験して、nana musicに入社しました」

約15年にわたってB to Bの受託開発にどっぷり漬かってきた佐藤氏はなぜ、畑の違うnana musicに入ることになったのだろうか?

「ずっと受託開発に携わっていたので、いつか自社サービスを手掛けてみたいという思いがありました。でも地方にいるとなかなかそのチャンスは巡ってきません。それで東京に拠点を移すことにしたんです。でも東京の事情もわからないまま、いきなり自社サービスを運営している会社に転職するのはどうかと思い、まずはSIerに入ることにしました」

いうまでもなく東京は日本におけるITの中心地。毎日のようにどこかでエンジニア向けの勉強会やイベントが開かれている。これも上京した理由だった。

「東京にいればふらっと立ち寄ることもできますが、地元から上京するとなるとちょっと覚悟が必要です。そこそこのお金を握りしめて出かけた勉強会が想像と違ったときのショックたるや(笑)。でも東京に住めばそんなこともなくなります。それも上京しようと思った理由のひとつでした」

DevOpsに目覚めて感じたSIerの限界

上京から4年ほど経ったころだった。業務でオープンソースのインフラ構築自動化ツール「Ansible」(アンシブル)を使い始めたことを契機に、佐藤氏はAnsibleのコントリビュータの輪に加わることになる。その過程でDevOpsへの関心が高まりこの分野を追求したいという思いが強くなったからだ。

「あらかじめ用意した設定ファイルに従って、ソフトウェアのインストールや設定を自動化してくれるAnsibleのおかげで、手間がかかっていたインフラ構築がずいぶん楽になりました。それからAnsibleに関するブログ記事を書いたり、関連イベントでライトニングトークをしたりするようになり、結果的にAnsible関連書籍の執筆やAnsibleのバグやドキュメントの修正などにも関わるようになりました」

佐藤氏は、以前からデータベース性能を左右するネットワークの基本構造を理解しようと、自腹で中古のスイッチやルーターを買い込み、納得がいくまで実験を繰り返すほどの勉強家。Ansibleにのめり込むうち、再び転職への思いがわき上がってきたという。

「Ansibleがきっかけで自動化の面白さを知り、DevOpsやSRE(Site Reliability Engineering)に取り組むなかで、SIerの限界も感じるようになりました。自動化でヒューマンエラーを減らそうと思っても、立場上立ち入れない領域がありますし、PDCAサイクルには終わりがないものなのに、納品してしまえばそのサイクルに関わることは許されなくなってしまいます。でも自社サービスを手掛けている会社ならそのどちらもありません。東京に来て5年。開発経験もそれなりに積めたので、2度目の転職を目指しました」

ユーザの「nana愛」を感じる瞬間

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2度目の転職活動に先だって目標にしたのは、長年夢見ていた自社サービスを手掛けている開発会社で、かつDevOpsにまで手が回っていない会社に入社することだった。

「できればDevOpsの先駆者として入社したいと思っていました。前任者がいなければ、自分が理想とするインフラ環境づくりがしやすいのではないかと考えたからです。当時nana musicには専任のインフラ担当者がおらず、自動化できる余地がたくさんありそうでしたし、面接時に現状の課題などについてもオープンに共有してもらえました。会社の雰囲気もとてもよかったので入社を決めたんです」

佐藤氏がnana musicに惹かれた理由はほかにもあった。UI/UXに通底する世界観や技術的な向上心を称えるエンジニアカルチャーなどだ。

「私自身、歌うことが好きでしたし、nanaの美しさと使いやすさを備えたデザイン、スタートアップらしいカジュアルさも気に入りました。なかでも一番惹かれたのがnana musicのエンジニアカルチャーです。SIer時代はプライベートな時間を割いてまで技術イベントや勉強会に参加する人は少数派でしたが、ここではむしろ逆で、エンジニアチームのメンバーは新しい技術に興味がありみな勉強熱心です。それにエンジニアの向上心を称える文化もある。nana musicに転職してこれまで仕事で感じていた違和感が払拭できたような気がしました」

ユーザの「nana愛」を感じる瞬間もあるという。

「Twitterで『#nana』で検索すると『仕事の合間にnanaに投稿しました!』『コラボできて楽しかった!』といった投稿に交じって『つらかった時期にnanaと出会って救われた』『前向きな気持ちになれた』とったコメントを目にすることがあります。直接、似たようなお話をユーザ自身からうかがうこともあるのですが、そんなときnanaとユーザのみなさんの間にある特別な絆を感じずにはいられません。こうした経験はB向けのサービスはもちろん、他のC向けサービスでもなかなか経験できないことではないでしょうか。これもnanaに転職してよかったと思うことのひとつです」

膨大な楽曲データを分析し、サービス改善に活かしたい

現在佐藤氏はDevOps Specialistとして主にnanaの開発を支えるインフラ改善を主導する役割を担っている。いまはまだインフラ専任のエンジニアは佐藤氏ひとりだけだが、ゆくゆくは若手に加わってもらい仕事の幅を広げたいと考えている。

「メンバーが増えたらいま取り組んでいるインフラ改善を発展させつつ、データ分析基盤を強化して、nanaが蓄積した膨大な楽曲データをサービス改善や新機能開発に活かすような取り組みにもっと注力したいですね」

累計700万ダウンロードを誇るnana。スマホの普及と世界のカラオケ人口、楽器演奏人口を考えればまだまだ伸びる余地があると佐藤氏は話す。

「インフラエンジニアがnanaの認知向上に直接貢献できる余地はそれほど多くありませんが、それでも縁の下の力持ちとして支えることはできるはずです。私たちエンジニアの取り組みがnanaを愛してくれる人を増やすことにつながれば、これほどうれしいことはありません。多くの音楽愛好者にnanaのことを知ってもらえるよう、これからも努力し続けたいと思います」